Ventana al Teatro Latinoamericano
2016年12月7日
NK603 : Action for Performer and e-Maíz
2016年12月に上智大学グローバルコンサーンの企画として来日し、上智大学構内で遺伝子組み換えトウモロコシをテーマにしたパフォーマンスNK603:Action for Performer and e-Maízを上演しました。また、「トウモロコシの夢と悪夢~身体・アート・社会」のタイトルで講演会をおこなったほか、多くの場で学生や観客と交流する機会を持ちました。

NK603 : Action for Performer and e-MaíZ(Photo: Miyako Fujinami)

NK603 : Action for Performer and e-Maíz 2016/12/7, Sophia University(Photo: Miyako Fujinami)

NK603 : Action for Performer and e-Maíz 2016/12/7, Sophia University

NK603 : Action for Performer and e-MaíZ(Photo: Miyako Fujinami)
【企画名】身体アートから社会を見つめる ビオレタ・ルナがキャンパスにやってくる
【公演作品名】NK603: Action for Performer & e-Maíz (初演2009年 サンフランシスコ)
【出演】ビオレタ・ルナ
【日時】2016年12月7日
【場所】上智大学9号館地下カフェテリア
【主催】グローバルコンサーン研究所
【共催】人権をめぐるラテンアメリカ演劇委員会
“Sin maíz, no hay país.”(トウモロコシなくして国は存在し得ない)
メキシコには “Sin maíz, no hay país.”(トウモロコシなくして国は存在し得ない)という表現があります。私たち日本人にとってのコメと同じようにトウモロコシは古来、人々の生活を支え文化を育んできた食糧です。しかし、隣国アメリカではそのトウモロコシに遺伝子組み換え技術が適用されるようになり1996年から栽培が開始されました。メキシコは自国の在来種を護るために1999年には遺伝子組み換えトウモロコシの実験禁止令を出しましたが、やがて多国籍企業の圧力を跳ね返すことができなくなり2009年に禁止令を解除しました。これに対してメキシコでは大きな抗議行動が展開されました。
NK603: Action for Performer & e-Maízは遺伝子組み換えトウモロコシNK603を題材に、遺伝子組み換え作物は食の安全だけでなく、民主主義を脅かす問題を孕んでいることを訴えた作品です。
「NK603」とはアメリカに拠点を置く多国籍企業モンサント社(2018年にドイツのバイエル社が買収)が開発した除草剤グリホサート耐性トウモロコシ系統を指します。日本では2001年に「NK603」が安全であるとのお墨付きを厚生省が出しています。
大規模農業で生産性を高めようとするモンサントのようなグローバル企業群は、遺伝子組み換え作物を開発し、農民が種子と農薬を自分たちの会社から買わなければならないシステムを作り上げてきました。さらに、多くの国の政府に圧力をかけ、世界各地の土地を自分たちが所有できるような法律の制定を促しています。その結果、種子を自家採取して栽培するという持続可能で伝統的な家族農業が否定され、自分の土地を強制的に追われた人々(その担い手の多くは先住民族)は行き場を失うのです。グローバル企業の強い影響力に太刀打ちできない人々は政府と交渉・協議することさえできません。
1994年にNAFTA(北米自由貿易協定)が締結されてから、主食であるトウモロコシをめぐってメキシコ社会にもたらされた大きな変化についてビオレタ・ルナは一人の女性として、一人のメキシコ人として、また先住民族の代弁者として次のように述べます。
「私たちにとってトウモロコシは食の基本であるだけでなく、何世紀にもわたり儀式や祝い事の場で象徴的な役割を果たしてきました。“トウモロコシから生まれた”ラテン・アメリカ人のアイデンティティも、vida(生命・生活・生き方・人生)も、文化も、遺伝子組み換えトウモロコシによって破壊されてしまいました。」
ビオレタ・ルナのこの作品は、こうしたコンテクストの中で生まれました。
ビオレタ・ルナは、パフォーマンス・アートは演者が一方的に演じるのでも、観客が一方的に観るのでもなく、パフォーマーと観る人たちで作品のテーマを共有し、共に考え、作品を観終えたあとの行動につなげていく場であるとしています。
NK603: Action for Performer & e-Maízでは遺伝子組み換え作物の危険性を象徴して注射を打つ・血糊を吐くといった演出もありました。また、ビオレタ・ルナがフィールド調査で得たトウモロコシと儀礼についての情報が衣装、小道具に反映されており、全身を使ったパフォーマンスのメッセージ力は観る者を圧倒しました。
【クレジット】
コンセプト/パフォーマンス/小道具/衣裳:ビオレタ・ルナ
映像:ロベルト・グティエレス・バレーア、ミッキー・タチバナ
音楽:ダビッド・モリ―ナ
【上智大学公演スタッフ】
舞台監督:ケンジ・ミヤモト
照明・音響:松丸進
舞台演技協力:權田菜美 伊藤光軌
配布冊子作成:藤浪京
制作補助:藤浪京
総合制作:吉川恵美子
Photo Credits
Miyako Fujinami
当サイト内の文章・画像等の無断転載はご遠慮ください。